ライター:日本建築仕上学会 女性ネットワークの会
日野興業㈱ 熊本 好美氏
建築現場で働く女性へのアンケート結果 ~中編~
前回のコラムでは、日本建築仕上学会 女性ネットワークの会が実施した「第3回建築現場で働く女性へのアンケート」の回答のうち、回答者の年齢、経験年数などについての結果を紹介しました。今回は、現場の女性用仮設トイレに関する項目のアンケート結果や現状について紹介します。
1.アンケート回答より
建築現場のトイレに関して5つの設問をいたしました。
1) 現場仮設トイレのイメージ
第一回目よりずっと続けている設問です。回答からわかるように首都圏、地方も回答の傾向は大きくは変わらず、「汚い」が一位、「くさい」が二位、そのあとに「狭い」「使いにくい」「暗い」が続いています。

2) 現場仮設トイレを利用したことがありますか
首都圏、地方ともに回答の傾向は同じであり、90%近くの方が利用したことが「ある」と回答していますが、残り10%強の方は利用したことが「ない」としており、ほかの場所のトイレを使用していることも推察されます。

3) 現場仮設トイレで気になる点を3つ
現場仮設トイレのイメージ、と同様、回答の傾向に大きな変化はありません。「臭気がこもっている」が一位、「清潔さがない」が二位、そのあとに「汚物入れが置けない」「男性のトイレが見える」「暑い」「寒い」等が続きます。イメージ通りに仮設トイレは臭くて汚く、また汚物入れが置けない現場では女性は生理用品の処理に困るでしょうし、男性のトイレが見えるということは男女別にトイレが設置されていないケースなのか、別に設置されていたとしても配置の関係で男性側からも女性用トイレが見えてしまっている可能性があります。

4) 現場仮設トイレは男女別がいいですか
首都圏、地方ともに回答の傾向は同じであり、90%近くの方が「男女別がいい」としています。

5) 快適トイレを知っていますか
今回初めての設問です。回答の傾向は首都圏と地方とで異なり、首都圏では「知っている」が30%強、「知らない」が60%強。地方では「知っている」が60%強、「知らない」が40%近くと、首都圏の方のほうが「知らない」方が多いことが分かりました。総合するとおよそ「知っている」「知らない」がおよそ半々となりました。

2.快適トイレとは
これらの結果から、回答者の現場の仮設トイレは臭く、清潔さが足りていない傾向であり、その設備やトイレの配置等も併せまだまだ改善の余地があると考えられます。
先述したように、国交省は2016年10月から直轄現場における仮設トイレを「快適トイレ」とすることを原則化しました。洋式便器や便座の除菌の為の設備、男女別のトイレ設置等を謳っており、原則化から3年半経過した現在は設置率も少しずつ上がって直近の調査では全国平均が39%となりました。

仮設トイレというものは戦後の高度成長期に誕生して以来、「和式で狭い」というその仕様が大きく変わることはありませんでした。男性が大半を占める建設現場のトイレでは、用を足せるという機能さえ整っていればよいという意識が長い年月の中で定着していたこと、仮設トイレの運搬を効率的にするため、トラックに積載しやすいサイズが自然と決まりそれを変更することはコストアップにつながること等が要因の一つです。しかし現場のトイレは「快適トイレ」の原則化をきっかけに変わりつつあります。国交省に倣い多くの自治体でも「快適トイレ」への予算を設けています(東京都・静岡県・徳島県等。日野興業調べ)。民間の建設会社・住宅業界団体等でも独自に現場のトイレ環境改善を行っています。また、仮設トイレメーカー、レンタル会社も「快適トイレ」について様々な新商品を開発し発表しています。

住宅現場への快適トイレの普及が進んでいる。
※同協議会加盟の住宅メーカーでの数値

建設業全体が、女性はもちろん男性にとっても快適に働くことができる職場となるよう、また、今後を担う若者に選んでもらえる業界となるよう、その一歩として現場の仮設トイレの改善は重要と感じます。快適トイレが一日でも早く建設現場に浸透していくことを今後望みます。

熊本 好美氏プロフィール
日野興業株式会社
営業企画部営業企画課
東京都出身
建築学科卒業後設計事務所、設備会社等を経て平成27年に仮設トイレの製造・販売・レンタルを行う日野興業株式会社へ入社。女性ネットワークの会には平成30年より参加している。子育て中のワーキングマザーでもある。

コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。