建設業における女性活躍コラム Vol.1


ライター:日本建築仕上学会 女性ネットワークの会 熊野康子主査

建築現場で働く女性へのアンケート結果 ~前編~

1.概要

 日本建築仕上学会女性ネットワークの会では、2015年より隔年で「建設現場で働く女性アンケート」を実施してきました。2019年4月~5月に第3回目のアンケートを実施いたしました。
 第1回目のアンケート回答数は149名、第2回目の回答者数は174名でしたが、今回は地方で働く現場女性の回答者が大幅にアップしました。今回の回答者数は295名で第1回目の回答者数の約2倍になりました。
 大半が首都圏からの回答でしたが、今年は半数の155名が地方からの回答で、約半数を占めました。統計も地方と首都圏で分けて行うことができました。
第3回目は33の設問を設けました。今年から新設した質問もありますが、3回続けている設問もありましたので、今までの回答もかさねて統計を取ることが可能でした。
首都圏と地方の区分は以下の通りです。

首都圏;東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬
地方;その他道府県(大阪、名古屋含む)
統計;各項目人数/各設問回答者数 比率%で表示 
複数回答(2つ、3つ選択)の場合 各項目回答者/総回答者数

設問のセクション
①回答者の属性 設問数9  経験年数、年齢、家族構成 など
②建設現場の現況  設問数13 仮設トイレ、現場での疲労回復方法 など
③働く意識について 設問数10

今回は、①、②のセクションについて回答の一部を紹介いたします。

2.アンケート回答

①回答者の属性

1) 建設現場で働いた経験年数
回答を図1に示す。地方ほど経験年数が長い人が多い傾向にある。図2に2015年、2017年のデータとの比較を示す。徐々にではあるが経験年数が長い人が増えている傾向にある。

図1 現場で働いた経験年数(2019年)
図2 現場で働いた経験年数(2015~2019年)

2) 年齢
2019年回答を図3に示す。地方ほど年齢も高い傾向にある。図4に2015年、2017年のデータとの比較を示す。30歳代までの割合が減り、40歳代以上が増えている傾向にある。

図3 年齢構成(2019年)
図4 年齢構成(2015~2019年)

3) 家族構成
2019年回答を図5に示す。地方ほど年齢も高い傾向が見られた、図6に2015年、2017年のデータとの比較を示す。未婚の割合が一番多いが、図5より、既婚子育て中の割合が地方では多いことがわかる。図6より、既婚子育て中の割合が増えている傾向にある。

図5 家族構成(2019年)
図6 家族構成(2015~2019年)

②建築現場の現況

1) 快適トイレを知っていますか
建設現場での仮設トイレは、「くさい・汚い」という印象がいまだに根強い。女性トイレも男女別仮設トイレを建設現場で設置している場所がまだ少なく、女性が現場でのトイレの使用に困っている現実がある。
国土交通省では、建設現場の仮設トイレとして「快適トイレ」を推奨している。その基準に基づいた建設現場用トイレについて知っているかどうかの設問を2019年より設置した。回答を図7に示す。地方の回答者のほうが「快適トイレ」という言葉が浸透していた。首都圏での認知度はまだ低いことがわかった。

図7 快適トイレを知っていますか(2019年)

2) 会社の作業服は男女別ですか
2019年の回答を図8に示す。地方ではサイズもデザインも男女同じである回答が多かった。図9に2015年、2017年のデータとの比較を示す。女性用のサイズが設けられているという回答が2017年は多いが、再び割合が減少した。

図8 会社の作業服は男女別ですか(2019年)
図9 会社の作業服は男女別ですか(2015~2019年)

3) 安全保護具で使用しにくい不満があるもの
結果を図10に示す。地方ではヘルメット、フルハーネス型安全帯に使いにくいと不満が高かった。一方首都圏では腰ベルト型安全帯に使いにくいとした回答が多かった。安全靴は軽量タイプのものもあるが、意見として重い、履きにくいという意見があり、使いにくいという意見も多かった。

図10 安全保護具で使用しにくいもの(2019年)

4) 現場でのメイク
今回より項目を少し変えてある。結果を図11に示す。地方ではUVケアとフルメイクをして建設現場に行くという人が一番多かった。首都圏ではUVケアのみが多い。前回と少し設問は異なるが、いままでで一番UVケアとフルメイクする人の比率が多い。

図11 現場でのメイク(2019年)

5)現場での疲労回復方法
今回より項目を少し変えた。現状の結果を図12に示す。しかし過去2回と同様に、疲労回復方法としては「甘いものを食べる」が一位となった。希望の結果を図13に示す。過去2回と同様に「早く帰る」が一位となっている。早く帰ることができないため、結局は甘いものを食べるなどして、疲労回復に対応している様子がうかがえる。

図12 現場での疲労回復方法・現況(2019年)
図13 現場での疲労回復方法・希望(2019年)

3.まとめ

今回の結果より、以下のような傾向が分かりました。

  1. 建設現場で働く女性のベテラン化が進んでいる。年齢や経験年数も高くなっている。また、結婚後や出産後も建設現場で働く女性が増えてきている。

  2. 建設現場での仮設トイレ、作業服、など働く環境については、徐々ではあるが改善がなされているように感じられる。しかし、快適トイレの意識の浸透がまだ十分ではないことや、現場に出るときにメイクをする女性が半数近くを占めるなど、意識を変えていかなければいけない場面はある。女性にとって建設現場という職場の改善がさらに必要なことが結果より示されている。疲労回復法で「早く帰る」ということを一番希望している女性が多いことからも、建設現場での働き方改革が重要であることがわかる。

次回の投稿では③働く意識について、回答の一部を紹介したいと考えています。
建設現場で働く女性の意識、今の仕事への気持ち、子育てへの思い、女性が建設現場で活躍していくためになどをご紹介したいと思います。
アンケートにご協力いただきました皆様に心から感謝いたします。


熊野 康子氏プロフィール

大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所
信頼性センター 耐火耐久性能グループ 主任研究員

北海道 札幌市出身
平成元年 フジタ工業株式会社入社(現;株式会社フジタ)入社
技術センターにて研究開発業務、建設本部 建築エンジニアリングセンター建築技術部での技術サポート業務に従事。
平成30年10月 大和ハウス工業株式会社総合技術研究所に出向。
現在、日本建築仕上学会 女性ネットワークの会 主査を務める。

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