ライター:床並 英亮氏
「1級土木試験の出題科目と学習要点(学科試験編)
~ やる順番を事前に知っておけば難しい試験ではない! ~
今回のコラムでは、1級土木の学科試験が、どのような試験なのか?について解説したいと思います。
1級土木の学科試験は、例年7月第1週の日曜日に開催されています。
2020年度は7月5日(日)が学科試験日(191215現在,未発表)となります。


では、学科試験ではどのような出題形式や出題範囲なのかを見ていきましょう。
まず、出題形式は4者択一式、午前と午後で2回に分けられて実施されます。
午前に実施される 問題A は、下記に示すように61問出題されますが、30問しか解答する必要がない問題です。
いわば、選択性が広いのが問題Aの特徴 といえます。

一方、問題Bは、下記に示すように出題35問すべてを解答する必要がある
必須問題 となります。

各分野に目をむけてみよう
● 問題Aの「一般土木」とは? 「しっかりマスターすべき箇所です!」
一般土木からは、「土工分野」「コンクリート分野」「基礎工・土留工」の3分野から計15問出題されます。ただし、12問を選択するため、3問は捨てることができます。一方、実地試験では、土工・コンクリート分野と土留工が頻出分野となるので、
一般土木で苦手箇所を極力つくらないように、基礎からじっくり学習していただきたいところです。

● 問題Aの「専門土木」とは? 「深入りは禁物!後回しでもOK!!」
専門土木は、下表に示すように34題も出題されます。これは、問題AとBを通しても最も出題が多い「編」になります。ただし、必要解答数は10題しかなく、出題数が多い割に点にならないのが専門土木編の特徴です。
市販されている多くの受験参考書は、出題される順番に目次構成されているため、専門土木編は前半に収録されていることが多いです。
仮に、皆さんが出題解答数が少ないということを知らないまま学習してしまうと、
受験対策に時間を要する割に点が伸びないという負のスパイラルに陥るので注意 が必要です。
また、専門土木は、受験生各自の実務経験による専門畑の知識だけでも正解できる問題も含まれます。逆にいうと、自身が専門としない分野には絶対に手を出さないことが重要なところになります。

● 問題Aの「法規」とは? 「主要な5法規+専門系で対応できる!」
工事を実施する際、法規がらみの手続きや規制が多くあります。法規の遵守が円滑な工事運営にどれだけ重要であるか?は実務で経験した人なら分かると思います。
試験では多くの法規について出題されますが、トンネル工事や港湾工事など各専門系に関係なく全員に必要となる共通した法規分野があります。
それは、「労働基準法」「労働安全衛生法」「建設業法」「騒音規制法」「振動規制法」の5分野です。これら5分野だけで、計7題になりますので、残り1題は自分の専門系の問題を解答すれば、確実に高得点が可能です。
また、法規編は、類似出題も多いため、過去問学習も非常に有効です。
ただし、2019年に改正された建設業法など最新情報も併せて入手することも忘れないでください。私が運営している「施工管理ドットコム」では例年、会員向けに最新情報を随時、配信しています。

● 問題Bの「共通工学」とは? 「実務経験があれば6割以上は解ける!」
「実務がなければ歯が立たない?」
共通工学からは、例年4題出題されています。測量では、トータルステーションやレベルの基本的な特徴などが問われています。設計は、「マスカーブの見方」「配筋図の見方」が隔年で1題出題されています。機械・電気も同様に隔年で1題ずつ出題されていますが、いずれも実務経験があれば問題なく6割以上の得点が可能な編です。
問題数も少ないため、専門土木同様に深入りは禁物です。

● 問題Bの「施工管理法」とは? 「学科・実地試験対策上、核となる最重要な編です!」
施工管理技士の試験ですので、施工管理法は文字からしても、とても重要な編であることは薄々、感じられるかと思います。
その中でも、安全管理の出題数は突出して多く、また、施工管理を行う若手技術者の皆さんにとって避けては通れない分野が安全管理のマスターといえます。
実務上でも最も使用機会が多いと思いますので、まずは、安全管理における安衛法や安衛則の要点を徹底的に頭に叩きこんでください。

その他、コラムVol.2 でも触れましたが、「工期内(はやい)」に「高品質(うまい)」で「経済的(やすい)」に工事目的物をつくるために施工管理という業務があるのでしたね。
よって、工程管理・品質管理・原価管理(施工計画内に含まれる)は、これら視点を念頭におきながら要点を学習してください。

また、品質管理では、一般土木で学習する「土工分野」「コンクリート分野」と密接に関係しますので、注意して受験対策してください。
まとめ
今回お話したかったことをもとめると、「試験に出る順番」に学習するよりも、点となりやすい重要箇所を優先して学習する「やる順番」を意識した学科試験対策を行っていただきたいということです。
やる順のイメージ図を下記にお示ししておきます。

次回は、難関の実地試験の攻略ポイントを解説いたします。

床並 英亮氏プロフィール
大学卒業後、大手マリコンで11年間、土木技術者として現場施工管理及び積算業務に従事する。
その後、地元の政令指定都市に転勤後約5年間、工事の設計の発注業務に従事し39歳で独立起業する。
独立後は、人材教育事業を主力に建設業の担い手確保活動に献身している。1級土木施工管理技士と技術士(建設部門)の社員教育も手掛けている。

← 若手技術者応援コラム 技術力向上への道 Vol.6を見る
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。