ライター:床並 英亮氏
「土木施工管理技士の試験概要」と
「一級土木施工管理技士の難易度」について[後編]
前回の「土木施工管理技士の試験概要」に引き続き、今回は「一級土木施工管理技士」の難易度について、だれも教えてくれない?(私の主観満載!)の切り口でお伝えしようと思います。
試験の難易度について
Point1:合格率から考える
まず、試験機関から公開されている受験者数と合格者数について、集計したグラフを以下にお示しします。15年ほど前から、学科試験と実地試験の合格率が逆転しています。


今年度の実地試験の最終結果は2020年の1月に発表されますが、学科試験については既に発表されており、受験者数33,036人中、合格者18,076人(学科合格率54.7%)という結果で例年どおりの傾向で推移しています。
直近5年のデータからだと、学科試験の合格率約58%に対して、実地試験の合格率は約40%です。また、実地試験は学科試験の合格者しか受験できないことも考慮すると、合格率の数字以上に、実施試験の方が学科試験より難易度が高いことが伺えます。
Point2:試験日程から考える
学科試験の難易度と実地試験(両方合格)の難易度を合格率から試算をしたいと思います。学科合格率60%を「1」とした場合、実地まで合格する率は約20%なので3倍の「3」と見なすことができます。

この、学科:実地=1:3という難易度比率と、各試験のスケジュール時間軸を2次元で表現すると、下図のようになります。

通常、学科試験対策は3月の受験申込から7月の試験まで対策期間を十分に確保することができます。一方、実地試験の場合、難易度が上がるばかりか、対策期間が学科試験に比べて短くなるのが一般的で、イラストからもその傾向がお分かりかと思います。
また、多くの受験者は学科試験の合否が判明する8月中旬まで、実地試験対策を行いませんので、なおさら実地試験の合格が遠ざかる傾向になりがちです。
よって、1級土木を突破するためには、難易度の高く・スケジュールも厳しい実地試験をターゲットにした学習計画づくりが重要になってきます。
Point3:学歴データから考える
次に、公開されている最終合格者の学歴別データを使い、下記のような棒グラフを作成してみました。
強い傾向とまでは言えませんが、近年は「大・短・高専」卒者が占める比率が増加しているため、「高・中・他」卒者の受験者にとっては、難しい試験といえるかもしれません。

ただし、最終合格者に占める2級土木取得者が、概ね50%含まれている統計データもあります。
前回のコラムVol.5でもお伝えしましたが、2級土木から受験するメリットが少ない「大・短・高専」卒者の多くが2級土木は受験していないと考えると、「高・中・他」卒の合格者の殆どは、2級土木から勝ち上がってきていることがデータから伺えます。
よって、「高・中・他」卒者が、1級土木に合格するためには、2級土木から取得するというのが、スタンダートな受験手法といえますね。
いずれにしても、
次回は、「出題科目と学習要点(学科試験編)」について、解説します。

床並 英亮氏プロフィール
大学卒業後、大手マリコンで11年間、土木技術者として現場施工管理及び積算業務に従事する。
その後、地元の政令指定都市に転勤後約5年間、工事の設計の発注業務に従事し39歳で独立起業する。
独立後は、人材教育事業を主力に建設業の担い手確保活動に献身している。1級土木施工管理技士と技術士(建設部門)の社員教育も手掛けている。

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