安全帯から墜落制止用器具へ


ライター:村木 宏吉

1 法令の改正

 2019年2月1日から、これまでの「安全帯」が「墜落制止用器具」と名前が変わり、フルハーネス型を使用することが原則となりました。

 従来の安全帯は、腰ベルト型のものが一般的でしたが、これだと墜落してぶら下がったとき、衝撃で内臓破裂を起こしたり、体重が腰ベルト1本に集中することから作業者が耐え切れなかったりしたことから、フルハーネス型を原則としたものです。

 フルハーネス型は、胴ベルトだけでなく、両肩と両腿と胸にも装着することから、墜落時には体重が分散されて負担が軽いのですが、従来のものより重く、値段も高いという特徴があります。

 名称は、欧米で使用されている「fall arrest equipment」を翻訳したものです。

出典:厚生労働省報道発表資料「安全帯の規格」を改正した新規格「墜落制止用器具の規格」より抜粋https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03290.html

2 要求性能墜落制止用器具とは

 作業者が墜落した時、その自由落下距離にショックアブソーバ、フルハーネスとランヤードの伸びを加えた値と墜落時に、ランヤードが緊張してショックアブソーバが機能し始めるまでの落下距離が生じます。その際、フルハーネスのD環よりも下にフックを掛ける場合には、ランヤードの長さにD環から下方のフック取り付け位置までの距離を加えたものとなります。

 それらの数字よりも低い場所で作業している場合には、墜落制止用器具としての性能が発揮できないこととなりますので、その場合には、胴ベルト型墜落制止用器具を用いることとなります。作業者の作業高さとその高さに見合った性能を有する墜落制止用器具を、要求性能墜落制止用器具といいます。

 したがって、フックの取付設備の高さや作業者の体重に応じたショックアブソーバのタイプとランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む。)を適切に選択することが必要となります。

 フルハーネス型墜落制止用器具を使用できるのは、原則として6.75メートル以上の高所で作業をする場合です。なお、高さまたは深さが2メートル以上の場所での作業は、墜落防止措置が必要です。

 どうしてそのような高さになるかというと、墜落制止用器具のショックアブソーバの構造がそうだからです。衝撃を吸収するショックアブソーバは、繊維ベルトを折りたたんで糸で縫ったものです。墜落の衝撃でこの糸がぶちぶちと切れながらベルトが伸びていくことにより、その衝撃を和らげるものです。

3 フルハーネス型は特別教育が必要

 フルハーネス型の墜落制止用器具を用いて作業を行う場合には、該当する労働者に対し、安全のための特別教育を実施しなければなりません。どの墜落制止用器具を選択するか、どのように装着するかなど、知っておくべきことが多いからです。

出典:厚生労働省 【別添2】「安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!」(リーフレット) P3より抜粋 https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000473567.pdf

4 参考資料

 厚生労働省から「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン (平成 30 年6月 22 日付け基発 0622 第2号)」が示されているほか、「墜落制止用器具に係る質疑応答集」が示されていますから、ご覧になってください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000406617.pdf

村木 宏吉氏 プロフィール

昭和52年(1977年)に旧労働省に労働基準監督官として採用され、北海道労働基準局(当時)、東京労働基準局(当時)と神奈川労働基準局(当時) の各労働基準監督署に勤務した後、同局管内各労働基準監督署及び局勤務を経て、神奈川労働局労働基準部労働衛生課の主任労働衛生専門官を最後に退官。 
元労働基準監督署長。

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