建設関係者必見のYouTube動画紹介 Vol.1


ライター:家入 龍太氏

型枠からコンクリ打設までを自動化!RCスラブ工場に潜入

ドイツのボラート社(Vollert Anlagenbau)は、型枠や鉄筋の組み立てからコンクリート打設までをロボットによって完全自動化し、床や壁に使われるコンクリートスラブを製造しています。「そんな工場を見てみたいけど、ドイツは遠いな」とあきらめ気分のあなた、YouTubeを見れば“バーチャル工場見学”ができますよ。

ドイツ・ボラート社の全自動スラブ生産工場(Images:Courtesy of Vollert Anlagenbau)

鉄筋コンクリートの床や壁を造るというと、合板で型枠を組み、鉄筋を1本1本、番線でしばり、コンクリートを打設する、という手作業が当たり前と思っている人も多いでしょう。

しかし、世界は進んでいるのです。ドイツのボラート社は、床や壁に使われる鉄筋コンクリートスラブの生産を、ロボットで全自動化してしまったのです。同社がYouTubeに公開した動画「二重壁と床スラブの全自動生産(High-Automated Production of Double Walls and Floor Slabs)で、バーチャル工場見学をしてみましょう。

まずは鋼製型枠のケレン作業

動画はまず、型枠の清掃作業から始まります。型枠といっても大きめの鋼板と金属製の棒のようなものです。これが次々と「ケレンロボット」の中に送り込まれて、キレイに再生されます。

使用後の金属製型枠。奥にあるケレンロボットに送り込まれる

型枠に接着された樹脂の残骸をしごき取るケレンロボット

ロボットが型枠内を正確に仕切っていく

キレイになった型枠は、再びコンクリート版の生産工程に回されます。まずはコンクリート版の大きさに合わせて、ロボットが金属性の棒を置いていきます。もちろんコンピューター制御なので、墨出しなどは行わず、ロボットアームが金属棒を次々と正確な場所に置いていきます。

また、スリーブのように穴を開けておきたい場所などには、発泡スチロールのような材料を配置します。これは人間が手作業でやっています。

キレイになった鋼性型枠

スラブの大きさに合わせてロボットがてきぱきと金属製の棒を置いていく

穴を開けたい場所には、発泡スチロールのような材料を配置しておく

配筋もロボットにより自動化

スラブの大きさに区切られた鋼製型枠は、次の配筋工程に運ばれます。配筋ロボットが区切られた鋼製型枠の内側に自動的に鉄筋を配置していきます。

鉄筋同士が交差する部分は日本の場合、焼き鈍し鉄線で緊結することになっていますが、動画を止めて観察すると、この工場ではバネのようなクリップを使っているようです。

また、クリップで留めていない交差部分もあります。鉄筋の上を人が歩いたり、コンクリート打設用のパイプやバイブレーターのケーブルを引き回したりすることがないので、こうした省略も可能なのかもしれませんね。

この工程で人間が行うのは、数カ所の吊り金具をセットする作業くらいです。

仕切られた鋼製型枠の内側にロボットによって自動配置された鉄筋

小窓の付いたコンクリート打設機

配筋が終わると、型枠はコンクリート打設工程へと運ばれます。大きな鋼製型枠ですが、規格化されているので、工場床に等間隔で設置されたローラーや、横移動用の「トラバーサー」という装置によって、まるで鉄道車両のようにスムーズに移動できます。

門型クレーンのように、型枠上を走行するコンクリート打設機は、コンクリートの出口に小窓がついており、打設範囲を細かく調整できるように工夫されています。 打設が終わると、型枠全体にバイブレーターによる振動が加えられ、生コンクリートの締め固めが行われます。

型枠を横移動させるトラバーサー。床上に等間隔に立つ青い柱の上には縦移動用のローラーが取り付けられている

小窓で細かく打設範囲をコントロールできるコンクリート打設機

打設直後は凸凹があったコンクリート表面は、型枠全体を振動させるバイブレーターによって平らにならされていく

工程調整用の型枠追い越し機も

コンクリート打設が終わった型枠は、その後、養生ルームに運搬されます。また、二重壁の場合は、コンクリートが硬化した一方の壁面をロボットが上下逆さまにひっくり返し、コンクリート打設直後の型枠の上に重ねるという作業を行っているシーンも見られます。

また、型枠ごとのコンクリート硬化度合いの違いによって工程を調整するため、「型枠追い越し機」も設けられています。

後でコンクリート打設した型枠が前の型枠を追い越す時に使われる型枠追い越し機

二重壁を作るとき、コンクリート版をひっくり返す装置

完成したコンクリート版

動画公開はナント、6年前だった

日本でも国土交通省が推進する「i-Construction」施策で、コンクリート工事の生産性向上が大きな課題となっていますが、ボラート社の全自動スラブ工場は大変参考になりそうです。

驚くべきことに、この動画が公開されたのは今から約6年前の2013年7月です。当時からこうしたスラブ製造の自動化が行われていたとは、驚きですね。今ではさらにシステムが進化しているに違いありません。

このコーナーでは、建設関連のオモシロ動画を国内外から発掘し、皆様にご紹介していきます。ご期待ください。(建設ITジャーナリスト、家入龍太)


家入 龍太氏 プロフィール

BIM/CIMやi-Construction、AIなどの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。新しいチャレンジを「ほめて伸ばす」のをモットーとしています。「年中無休・24時間受付」で、建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行うほか、関西大学非常勤講師として「ベンチャービジネス論」の講義も担当。公式サイトは「建設ITワールド」。

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